高齢になってから遺言を作成する場合に注意したいこと

こんにちは。行政書士ポラリス法務事務所の北原です。

今年は例年に比べて遅い梅雨明けとなりましたが、明けた途端に猛烈な暑さが続いていますね。

毎年、この時期になると、多くの方が熱中症で救急搬送されており、特にご高齢の方が締め切った室内で冷房を入れないまま倒れた…というお話も、残念なことに多く聞かれます。

加齢により暑さや喉の渇きなどを感じにくくなることもあるようですので、一定の気温を超えてきたら冷房を入れ、また、定期的に水分補給をするなど、熱中症になりにくい環境・習慣作りを心掛けていきたいですね。

さて、先日、100歳に手の届きそうなお客様からご依頼を頂戴し、公正証書遺言作成のお手伝いをする機会をいただき、色々と思うことがありました。

そこで、今回は、【高齢になってから遺言を作成する場合のリスク】とその【対処法】について、少しご紹介したいと思います。

高齢になってから遺言を作成する場合のリスク

 ご高齢になってから遺言を作成し要とする場合には、次のようなリスクが考えられます。

  • 気力・体力が続かず、自筆証書遺言を書き切ることが難しくなる。
  • 公正証書遺言であっても、ご本人の気力・体力が続かなければ、開始した手続きを最後まで完了できない場合もある。
  • 遺言能力が不十分と判断されれば、公正証書遺言が作成できない場合もある(※仮に作成できても、後から無効が争われる恐れがある)。

 一点目について。

 近年の相続法改正により、自筆証書遺言についても、財産目録部分は写しでも可となり、その作成の負担は軽減されたといわれています(※ただし、全ページに署名・押印は必要。)。

 しかし、遺言本文については、従前通り、全てご本人の自書である必要がありますので、(記載の分量にもよりますが、)本文を書き切れるほど気力・体力に自信のない方の立場に立てば、その負担軽減の程度はさほどのものではないように感じます。

 実際に、今回のお客様からご相談いただいたきっかけも、自筆証書遺言を書き始めたものの、体力的に最後まで書き切ることができなかったから…というお話でしたので、ご高齢となったご本人にとって、自筆証書遺言を作成するご負担がいかに大きいかを伺い知る事ができます。

 次に、二点目について。

 自筆証書遺言と比較すると、ご本人のご負担は少ないといわれる公正証書遺言じついては、遺言の文案作成自体は公証人が行うため、それについてのご本人のご負担はなくなります。

 しかし、遺言の文案を作成するためには、その前提として、ご本人からのヒアリングや、ご本人への確認等が欠かせませんので、ご本人のご負担がゼロになることはありません。また、専門家にご依頼されずにご自身で公証役場にご依頼される場合には、それに加えて、ご自身で戸籍謄本や不動産登記簿謄本等の収集・事実関係の整理を行い、財産の配分について決めた上で、公証役場に出かけて公証人との事前面談等をする必要がありますので、ご負担はもう少し大きくなります。

 したがって、公正証書遺言であっても、(自筆遺言ほどではないものの、)ご本人に一定程度のご負担がかかることは避けられません。

 そして、三点目について。

 これは、公正証書遺言に限らず遺言全体について言えることですが、遺言が有効に成立したと認められるためには、ご本人に遺言能力(:ご自身の遺言の内容を理解し、そこから導かれる結果を認識する能力(民法第963条))がある状態で作成されていることが前提です。

 したがって、ご高齢となり、ご本人の遺言能力の存否が疑われるような状態にある場合で作成された遺言は、後から無効が争われかねませんので、そもそも公正証書遺言の作成依頼を公証役場で受けてもらえない可能性があります。

考えられる対処法

 では、こうしたリスクを低減するには、どうしたらよいのでしょうか?

 まずは、言うまでもないことですが、遺言作成をご検討なのであれば、気力、体力、そして、遺言能力が十分にあると認められるうちに作成することが一番の対処法です。

 そうは言っても、もう既にある程度の年齢になってしまったけれど、遺言作成を検討したい…という方には、自筆証書遺言よりもご本人のご負担の少ない公正証書遺言を選ぶことをお勧めします。

 さらに、お身体にご不安がある等の理由により、公正証書作成当日に公証役場まで足を運ぶことが難しい場合には、(手数料は多少加算されますが、)ご希望により公証人にご自宅・施設・病院に出張を頼むことも可能です。加えて、書類の収集や公証人とのやり取りをご負担に思われる場合には、専門家に作成支援を依頼することにより、ご本人のご負担を最小限に抑えることもできます。

 なお、認知症あり=遺言能力なし、というわけでありませんので、多少の認知症の症状が認められる場合であっても直ちに遺言無効となるわけではありません。また、認知症などにより成年後見人が就いている方であっても、一定の要件を充たす場合には、有効な遺言を作成できる可能性もあります(民法第973条)。

 弊所では、ご本人のご年齢やご状況に合わせて、よりご負担の少ない形で、有効な遺言を作成するためのお手伝いをさせていただいております。

 ご不明な点などございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

行政書士ポラリス法務事務所

代表  北原 絢子


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