遺言・終活

                                      

■遺言・終活について

(1)遺言について

 近年、相続をめぐる「争族」という言葉が大分一般化してきました。他方で、遺言はお金持ちの書くもの、というイメージは未だに根強く残っているようです。

 その実、「争族」は、その7割が相続財産が5,000万円以下のケースで発生しており、また、そのうち半数(全体の3割程度)は相続財産1,000万円以下のケースで発生しています(平成26年・家庭裁判所調べ)。つまり、「争族」は、お金持ちの問題ではなく、むしろ、限られた財産をめぐって生じる場合のほうが多い、といえるようです。

 こうした誰にでも起こり得る「争族」問題に対して、事前に出来る有効な対策の一つが、遺言の作成です。

 ここでは、遺言の作成を検討したい方向けに、その種類や遺言をしておくべきケースについてご紹介します。

①遺言の種類

 遺言は、大まかに次の3種類に分けられます。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

このうち、主要な2種類について、それぞれの特徴と相違点等を次にまとめました。

 

自筆証書遺言

<§968>

公正証書遺言

<§969>

作成方法 遺言者自身が、前文・日付・氏名を全て自書して、押印しなければならない。
(※財産目録については自書でなくともよいが、その全てのページへの署名・押印は必須。)
証人2人以上の立会いの下、遺言の趣旨を公証人に口述し、公証人が読み上げる遺言書の内容が正確であることを確認した上で、署名・押印する。
(※自宅や病院での作成も可能(ただし、出張費等は手数料と別途かかる)。)
メリット 自分で書いて作成するため、費用がかからず、いつでも手軽にできる。 ・公証役場により作成されるため、要式の不備が少なく、遺言の内容が実現される可能性が高くなる。
・公証役場で保管されるため、紛失、偽造、隠匿又は破棄等の恐れがない。
・死後、家庭裁判所による「検認」手続きは不要。
デメリット ・全文を自書しなければならないため、ご本人への負担が大きい。
・要式不備により、無効とされる恐れがある。
・相続人その他の第三者による偽造、変造、隠匿又は破棄等の恐れがある。
・遺言者自身で保管するため、紛失の恐れや、死後に発見されない恐れがある。
・相続発生後、家庭裁判所による「検認」手続きが原則として(※)必要なため、手続きに時間がかかる。

・手間と費用がかかる。

・万一、手元に置いていた遺言の謄本が紛失しても、再発行が可能である。

・公証人によって作成され、偽造又は変造の恐れがないため、その点が相続人間における争いの種になることは少ない。

作成費用 無 料 相続財産の価額に応じて公証役場への手数料がかかる。
証人 不 要 2人以上必要
保管 原則として、ご自身又は専門家等の信頼できる者に保管を依頼する。
(※令和2年7月10日より、法務局での預り制度がスタート。詳しくは、こちらへ。)
公証役場で保管される。
(※ご本人には謄本等が交付される。)
検認 原則として(※)必要 不 要
※令和2年7月10日にスタートした「自筆証書遺言保管制度」をご利用される場合、自筆証書遺言であっても「検認」のご負担を省くことが可能になりました。詳しくは、こちらをご参照ください。

 

 以上のようなメリット・デメリット等を総合的に考慮すると、やはり公正証書遺言のほうが遺言としての実効性が高く、推奨されます。


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(※費用については、こちらをご参照ください。)

②遺言を残すべきケース

 遺言を残すべきケースは多岐に渡りますが、なかでもよく目にするケースを以下にご紹介します。

 ご自身が該当していそうだな…と思い当たる点がある方は、お早目のご準備をお勧めします。

(i)法定相続分通りの相続を望まない方

 法律上、相続財産の割合(「法定相続分」といいます。)は決められています。したがって、相続人のうちの一部に少し多めに残したかったり、相続人のうちの一部には既に生前贈与しているので相続分は少な目でいい…等々、法定相続分とは異なる割合で相続させたい場合には、遺言でそれを明らかにしておく必要があります。

(ii)相続人以外の第三者に財産を残したい方

 子どもの配偶者(嫁、娘婿)・甥・姪、内縁の夫や妻、親しくしていたご友人その他法定相続人ではないけれどお世話になった人に財産を残したい場合、遺言を作成しておかなければ、ご本人の意思を実現することはできません。

【参考コラム】平成30年の民法改正により、子どもの配偶者その他の「被相続人の親族」が被相続人に対して介護等を尽くしてきた場合には、新たに「特別寄与者」〈民法§1050〉として、相続開始後に相続人に対して支払い請求ができることになりました。しかし、お嫁さん等の側からすれば、この請求というのは心理的にしづらいものと思われますので、ご本人の意思に基づいてお嫁さん等に財産を残してあげたい場合には、やはり遺言がお勧めです。

(iii)子どものいないご夫婦

 お子様のいらっしゃらないご夫婦の場合、ご自身が亡くなれば自動的に配偶者に全ての財産が相続される、と考えられていることもままあります。しかし、ご自身の親御さんやご兄弟がご健在の場合には、親兄弟(ご兄弟が他界されている場合には、その子である甥姪)にも法定相続分がありますので、遺言がない場合には、配偶者と親兄弟等との間で遺産分割協議が必要になり、そこでトラブルになる恐れがあります。このことから、配偶者様だけに全ての財産を遺したい場合には、遺言を書いておく必要があります。

【参考コラム】兄弟姉妹には遺留分が認められていませんので(民法§1042-I)、「全ての財産を配偶者に」等の遺言を残しておくことにより、その遺言の内容については兄弟姉妹の側から争えなくなります。

(iv)独身の方

 独身の方が亡くなると、法定相続分に従って、親御さん又はご兄弟が相続することになります。ですので、親兄弟以外の第三者(例えば、生前親しくしてくれたご友人や内縁の夫・妻や恋人その他寄付をしたい団体等があればその団体等)に財産を残したい場合には、それを遺言で明らかにしておく必要があります。

(v)離婚・再婚等により家族関係が複雑な方

 離婚をすると、前婚の配偶者は法定相続人でなくなりますが、前婚でもうけた子どもは離婚後も法定相続人であることに変わりはありません。したがって、その後、再婚してからご本人が亡くなった場合には、再婚後の配偶者・子どもと前婚の子どものいずれもが相続人として相続手続きに関わることになります。このように顔も見たことのない相手とともに相続手続きを行うこととなると、ともすればトラブルに発展し、相続手続きが長期化することは想像に難くありません。こうした事態を避けるためにも、複雑な家族関係のある方は、遺言を作成しておくことが大切です。

(vi)不動産等の分割しにくい財産が多い方

 相続人が複数いる場合、全ての財産が分割のし易い預貯金等であればよいのですが、不動産等の分割しにくい財産が多い場合にはそれを誰に分けるか、また、その分ける方法が問題になり得ます。この場合も、生前に処分の方法について検討し、遺言の作成等の対策をしておくことが有効です。


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(2)終活について

 年齢的にもそろそろ相続についても考え始めたい、けれど、遺言を作成するとなると少しハードルが高くて二の足を踏んでしまう…という方向けに、弊所では、いわゆる「終活」についてのご相談もお受けしています。

 まずはお気軽に、ご夫婦やお友だちと一緒に、エンディングノートを書くところから始めてみませんか?

 以下では、終活やエンディングノートについて少し触れていきたいと思います。

①終活とは?

②エンディングノートとは?