こんにちは。行政書士ポラリス法務事務所の北原です。
今年は新型感染症の影響により帰省を自粛される方も多いようですが、今週はお盆休み期間という時期もあってか、やはり例年どおり、先週に比べて通勤する方も大分減っているように感じます。
子ども達にとっては、長かった休校期間のしわ寄せを受けて今までにない短かい夏休みとなってしまったようですが、それでも貴重な夏休み、コロナ禍でも何か楽しみがみつかるといいな…と願うばかりです。
さて、こう暑い日が続き、また、外食もなかなかできないとなると、たまには外ご飯を気軽に自宅で楽しみたい…と、デリバリーをお願いしたくなるものです。
そして、今や、デリバリーといえば…と出てくる名前の一つに必ず入るのが、UberEatsですよね。コロナ禍の外出自粛の下で益々一般に浸透し、既に多くの方が利用されているのではないでしょうか。私も、遅ればせながら、先日、初めてこのサービスを利用して、清澄白河の美味しいハンバーガー屋さんから商品を購入してみました。自宅に居ながらにして外食気分を楽しめて、たまにはいいものですね。
Uber Eatsの危険性
そんなUberEatsですが、短時間で出来るだけ多くの件数をこなしたい…という気持ちからか、そのロゴ入りのリュックを背負った一部の配達員による信号無視や危険な追い越しなどの運転マナーの悪さが目につくことがあります。私自身、歩行者として青信号を渡ろうとした時に、信号無視して車道からヒュッと出てきたライダーにぶつかられそうになったことがあります。
ひどいケースでは、自転車で高速道路に入ってしまったり、当て逃げしたり…なんてケースもあるようですので、車のドライバーとしても、歩行者としても、もはや特に注意を払わねばならない対象の一つといっても過言ではありません。
こういったことが常態化してくると、そのうち大きな事故に繋がってもおかしくはないでしょう。そして、事故が起きた場合には、当然ながら、その責任の所在が問題になります。今回は、そのうちの民事責任について、みていきましょう。
民事責任は問えるの?
まずは、事故を起こした配達員自身には、要件を充たせば当然に不法行為責任(民法第709条)が生じますので、賠償責任を問う事は可能です。しかし、個々の配達員に賠償請求をしたところで、資力の面からいって実際に支払いを受けることは難しい場合が多いと思われますので、ここは、配達員を使って利益を上げているUber側の責任について考えたいと思います。
通常、従業員が業務中に起こした事故については、原則として使用者が不法行為責任を負います(「使用者責任」(民法第715条第1項))。この規定の趣旨は、「報償責任」、すなわち、使用者は他者を使用することによって自己の活動範囲を拡げ、それによってより多くの利益を収めているのであるから、それに伴って生ずる損害もまた当然に使用者が負担すべき、ということです。Uberも、配達員を使うことによってより多くの利益を出していることから、この報償責任の原則によれば、損害もまた負担すべきということになりそうです。
ところが、UberEatsの配達員が事故を起こした場合は、この原則が適用されるかは難しいところです。なぜならば、Uberと配達員との間には、雇用関係はなく、業務委託関係があるに過ぎない(=Uberの配達員は、従業員ではなく、個人事業主である)ためです。
たしかに、民法第715条第1項に定める「ある事業のために他人を使用」するという文言は、広く解釈されており、実質的な指揮・監督関係があればよく、必ずしも雇用関係はなくてもよい、とされています。しかし、(Uberと配達員間の具体的な指揮・監督関係の程度は分かりませんが、)一般的に、独立して仕事をしている個人事業主と注文主との間には、原則として指揮・監督関係は存在しないのが通常であることからすると、Uber本体に使用者責任を問うことは難しそうです。
また、(配達員が「請負人」であるとした場合、)民法第716条の「注文者責任」も考えられますが、この規定によれば、注文者(=Uber)は原則として責任を負わないことになってしまいます。
UberEatsについては、以前より配達員に労災が適用されないこと等が問題とされていましたが(雇用されていないので、当然と言えば当然のことなのですが…)、雇用によらない働き方については、万一のときには法人に対する民事責任は問うことが難しく、したがって、被害者も救済されにくい恐れが高いといえるでしょう。
保険請求の検討を
そこで、次に、依るべきものとして、Uberの損害保険について考えてみましょう。Uberは、三井住友海上火災保険との間で「対人・対物対象責任保険」の契約をしています。これにより、配達員がデリバリー中に歩行者に接触して怪我を負わせた場合や、車両などの第三者所有物にぶつけて損害を与えた場合には、その損害が補填される可能性があります。
ただ、保険請求は原則としてUber側から保険会社に対して行われるため、聞くところによれば、配達員の特定ができないことを理由として会社から保険請求を拒まれることもあるようです。そこで、交通事故に遭った場合には、まずは加害者である配達員に免許証等の身分証を提示させて住所・氏名・電話番号を聞き、警察に報告するなど、通常の事故処理をしっかりと行うことが大切です。
常日頃から周囲に注意を払って過ごしつつ、万一の場合には泣き寝入りせずに済むように備えたいものですね。
行政書士ポラリス法務事務所
代表行政書士・ファイナンシャルプランナー
北原 絢子