いざという時のために知っておきたい、「内容証明」について

 こんにちは。行政書士ポラリス法務事務所の北原です。

 一年で一番寒い時期といわれる大寒を過ぎました。これから少しずつ春が近付いてきますね。東京その他の一部地域では新型感染症の陽性者数の急増が止まらず、年初からは緊急事態宣言も出されましたが、そんななかでも、春の足音は少し明るさをもたらしてくれるような気がします。

 さて、先日、地主さんが亡くなったが土地の相続人が決まらず地代を受領してもらえないというお話をお伺いし、内容証明について説明する機会がありました。そこで、今回は、内容証明について少し書いてみたいと思います。

「内容証明」って、何でしょう?

 恐らく、言葉は耳にしたことはあるけれど、実際に実物を見たことはない、という方が多いのではないでしょうか?

 「内容証明」とは、①いつ、②誰から誰に対して、③どのような内容の手紙を出したか、を郵便局に証明してもらえる制度です。重要な手紙は、後々になって、その手紙を出したことの証明が必要になる場合があります。「内容証明」とは、その証明を、郵便局が行ってくれるものなのです。

 …と書くと、単に証明するだけのものか…と思われるかもしれません。たしかに、内容証明それ自体は相手方に何らかの法的拘束力を及ぼすものではありません。しかし、内容証明というものは、それを受け取る側に対して、心理的プレッシャーを与えるものではあります。それまでは再三に渡って請求しても代金を支払ってくれなかった相手方が内容証明を送った途端に支払う気になった…などというケースがよく聞かれるように、受け取った相手方の行動を促す効果が期待できるものでもあるのです。

どんなときに出せばいいの?

 このように、内容証明は、誰にどのような内容の手紙を出したかの証明ができ、かつ、相手方に心理的プレッシャーを与えることができるものです。このことから、内容証明は、送ることによってこれらの効果を期待したい場合に使うべきといえます。具体的には、内容証明を出すべき典型的な場合として、次のようなケースが挙げられます。

  • 契約を解除したいとき(クーリングオフも含む。)
  • 債権譲渡の対抗要件としての確定日付を取りたいとき
  • 債権放棄をするとき
  • 時効を中断させたいとき
  • 債権回収ををしたいとき
  • その他相手方が約束を守らないとき

形式や出し方に決まりはあるの?

作成の際の注意点

 内容証明については、これに書かなければならないというような決まった用紙はありません(ただ、定型用紙が欲しい方向けに、市販のものはあります)。ですので、手書きであっても、パソコンで作成した文章をプリントアウトしても構いません。ただし、その形式には以下のような決まりがありますので、作成の際には注意が必要です。

  • 1行20字以内、1枚26行以内で書くこと
  • 同文の手紙を3通作成すること(※手書きの場合、2通目以降はコピー可。)
  • 使える文字は、仮名・漢字・数字・英字(※固有名詞のみ可。)・括弧・句読点・その他一般に記号として使用されるものに限定される
  • 2枚以上に渡る場合は、綴り目に印(契印)を押すこと
  • 差出人と受取人両方の住所氏名を書くこと
  • 手紙以外のもの(写真や資料等)は同封してはならない

 上記は主要な注意点ですので、誤記についての修正方法やその他の詳細な決まりについては、こちらの日本郵便のサイトでご確認ください。

郵便局で出す際の注意点

 上記のような決まりに従って内容証明の作成ができたら、次に、郵便局で内容証明郵便として出すことになります。その際には、以下の注意点があります。

  • 差出郵便局は、集配郵便局と指定の内容証明取扱い郵便局に限定されているため、事前に最寄りの郵便局に確認をすること
  • 郵便局には、次のものを持参すること:内容証明郵便とする手紙(3通)・封筒(差出人と受取人の住所氏名を記載したもの)・差出人の印鑑・郵便料金(内容証明料金+一般書留料金が加算されます。以下の配達証明料及び本人限定受取料金は別途。)
  • 「配達証明付き」にすること
  • 受取人本人に受け取ってほしい場合には、「本人限定受取郵便」を利用すること

 上記の補足として、内容証明はどういった内容の手紙を誰が誰にいつ出したのか、は証明してくれますが、それを受取人が受け取ったのか・いつ受け取ったのかを証明してくれるものではありません。そこで、内容証明を相手方がいつ受け取ったのかを明らかにするために、郵便局で内容証明郵便を出す際には、必ず「配達証明」扱いにしてもらうように窓口でお願いしましょう。

 その他、内容証明郵便の出し方についての詳細は、こちらでご確認ください。

内容証明を出してはいけないとき

 このように、内容証明は、使い方によっては相手方に行動を促す効果を期待できるものです。しかし、相手方と問題解決後も長く付き合わなければならない関係にあったり、内容証明自体が差出人自身にとっても不利な証拠となりうる恐れがあったり、また、内容証明によって相手方に倒産の恐れがあるような場合等には、内容証明を出すことによって返って取り返しのつかない結果を招く危険性があります。

 今後も相手方と良好な関係を保ちたい場合には、内容証明等を出すことなく、粘り強く当人同士でのお話し合いで解決することが大切です。そして、それ以外の理由で内容証明を出してはいけないときに当たる場合や、なかなか判断がつかないような場合には、ご自身の判断で内容証明を出される前に、まずは専門家に相談されることをお勧めします。

 というわけで、今日は内容証明の概要について、まとめてみました。何かのご参考になりましたら幸いです。ご不明な事がございましたら、お気軽に弊所までご相談ください。

行政書士ポラリス法務事務所

代表 北原 絢子