【遺言のお話・その①】遺言を書かない理由に、実は根拠がないワケ

 こんにちは。行政書士ポラリス法務事務所の北原です。

 いつもより少し早い節分・立春が過ぎ、暦の上ではもう春ですね。このところ暖かい日が続くな…と思っていたら、先週、関東では史上一早く「春一番」が吹いたようです。梅の花の開花が進んでいるのがあちらこちらで見られ、季節が進んでいることを肌で感じられる今日この頃です。

 さて、話は変わり、突然ですが、皆さまは既に何か「終活」を始められていますか?(「終活」というと、あまりいいイメージを持たない方も多いかと思いますので、用語にかかわらず)ご自身の老後や死後のご準備を始められていますでしょうか?

分かっちゃいるけど…という方が多い真実

 少し前のデータになりますが、ご自身の老後などのために準備をしなくてはいけないという危機感を抱いている方は多いものの、実際に何らかのご準備を始められている方は、65歳以上の10人に2人程度にとどまるそうです。

 就職・結婚その他のいわゆる人生の一大イベントについては多くの方が具体的な準備を計画的にされているのに対し、それらよりも確実に万人に訪れる老後や死についての準備をされる方が少ない、という事実。もしかしたら、その背景には、後者には消極的なイメージがあり、できることならあまり考えたくないから、あるいは、漠然とし過ぎていて何から手を着けるべきか分かりかねているから…等の理由があるのかもしれませんね。

 そこで、終活と言えば、まず多くの方が思いつくであろう「遺言」について、そのポイントを、今回から何回かに分けて紹介させて頂きたいと思います。今日は、その必要性について触れていきます。

書かない理由には、実は根拠がない?

 遺言を書く必要はない、と考えられている方のなかには、以下をいずれかを理由として挙げられる方が多いようです。

  1. 争いになるほどの財産はないから大丈夫
  2. 普段から家族仲が良いので、ご自身の死後に「争族」とはなるはずがない
  3. うちには子どもがいないから、争いになることはない
  4. 私は独身だから相続は関係ない
  5. 法定相続分に従った相続で問題ない etc.

 しかし、上記理由には、それぞれ次の事実から、実は根拠がないことが分かります。

  1. 遺産争いのうち3割は、遺産額1,000万円以下のケースで発生している
  2. 適切な遺言が遺されていない結果、仲の良かったご家族間にも争いが生じるケースが多々ある(※子の配偶者等の第三者も首を突っ込んでくることで、ややこしくなるのが相続です。)
  3. お子さんがいない場合にはご両親やご兄弟にも法定相続分があるため、配偶者様とご両親・ご兄弟との間で争いになるケースがままある
  4. 独身の方に、法定相続人の他に遺産を残したい方がいらっしゃる場合には、遺言がなければ実現不可
  5. 遺産に不動産が含まれる場合には、法定相続分通りに相続した結果、相続人間での共有状態が生じ、管理・処分に困難を来たす恐れがある

 このように、ご本人が遺言がなくても大丈夫と思っていた場合にも、適切な遺言がなければ後々になって争いに発展する場合もあります。ですので、上記のような理由で遺言は必要ない、と考えている場合には、今一度その必要性について再検討をされてみてもいいかもしれません(※なお、こちらで遺言を書くべきケースについてまとめていますので、よろしければご参照ください)。

 適切に遺言を書くことは、残されるご家族に不要な争いの種を残さないこと、また、ご本人の死後に生じるご家族のご負担を出来る限り軽くしてあげること、と考えて、ご準備頂くのがお勧めです。

 では、適切な遺言とは、どのようなものなのでしょうか?次回以降は、適切な遺言について知るため、まずは「遺言の種類」から一緒にみていきたいと思います。


≪次回以降の遺言シリーズ≫


 今回もお読みいただきまして、ありがとうございました。

行政書士ポラリス法務事務所

代表  北原 絢子


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