【遺言のお話・その④】公正証書遺言を作成するには?

 こんにちは。行政書士ポラリス法務事務所の北原です。

 東京では桜が満開を過ぎて、いよいよ春爛漫となってきました。先週末は最後のお花見の機会と思われたので、墨田区内では桜の名所(?)の錦糸公園までお花見がてら散歩に行ってきました。園内は桜がまさに見頃を迎えていて、多くの人で賑わっていました。

 さて、前回までに、遺言の種類や効力についてお話しし、やはり公正証書遺言が安心とのお話を書いてきました。しかし、公正証書遺言と聞くと、どうしても手続きがよく分からないのではないか…などと心配で、あきらめてしまわれる方もいらっしゃるように思います。

 そこで、今回は、遺言シリーズのまとめとして、公正証書遺言の作成のために必要なものをお伝えしていきます。


≪前回までの遺言シリーズ≫


公正証書遺言作成の流れ

 まずは、公正証書遺言の作成のイメージができるよう、完成までの全体の流れをみていきましょう。ご自身での公正証書遺言を作成をご検討されている場合、その流れは次の通りです。

①必要書類(※次項に記載。)を集める

②「誰に」、「どの財産を」「どんな配分で」残すかを決める

③証人(2人)に依頼する

④公証役場に連絡し、公証人と打合せをする

⑤打合せに基づき作成してもらった遺言書の文案を確認する

⑥公証役場に出向き(※証人とともに。)、公正証書遺言を作成する

余裕をもったスケジュール設定を…!

 公正証書遺言の作成完了までの期間としては、公証人の予定にもよりますが、④の初回の打合せからおおよそ1か月~1か月半程度かかります。

 さらに、上記のように全体を「流れ」として記載すると、簡潔に済む手続きのようにも思えますが、その実、①必要書類の収集等に想定外に時間を取られる場合もあります。例えば、離婚・再婚を繰り返している場合、そして、前婚でできたお子さんがいらっしゃるような場合等には、遠方の役所から戸籍を何度も取り寄せることになる等、戸籍集めに相当の時間を要することもあります。また、毎年お手元に届く固定資産の納税通知書を紛失してしまったような場合には、都税事務所まで固定資産税評価証明書を取得しに行かなければなりませんし、時には、証人探しに意外な手間がかかる場合もあります。

 上述した作成期間の目安は、あくまで、全ての書類集め等が終わっていることを前提としたものすので、それ以前の書類集め等にもそれなりの時間がかかることを想定した上で、十分に余裕をもったスケジュール設定をしておくと安心です。

公正証書遺言作成のための必要書類

 公正証書遺言を作成するためには、公証人に、財産を相続する方との関係性や、遺す財産の内容(不動産ならば、所在地・評価額等)を明確に示すことが必要です。そのためには、次のような書類を公証役場に提出する必要がありますので、予め準備しておきましょう。

①遺言者本人の本人確認資料

 印鑑登録証明書と実印があれば足りますが、ない場合には、運転免許証、マイナンバーカード等。

②遺言者と相続人との関係を示す戸籍謄本(※全部事項証明書)

③(財産を相続人以外の第三者に遺贈する場合には、)その方の住民票(※法人の場合には、商業登記簿謄本(※全部事項証明書))

④(残したい財産に不動産があれば、)不動産の登記簿謄本(※全部事項証明書)、固定資産納税通知書又は評価証明書

⑤(不動産以外の財産を残す場合には、)その資産の内容、価額の情報

 例えば、預貯金を残したい場合には、当該預貯金のある金融機関名・支店名・口座番号・作成時点における残高を示す、通帳の写し等があると、安心です。

⑥証人2人の氏名、住所、生年月日及び職業を記したメモ

作成にかかる手数料

 ご自身で公正証書遺言を作成する場合、作成のためには、公証役場に支払う手数料や証人の日当(※お支払いされる場合のみ。)がその費用として必要になります。

 公証人の手数料は、以下の通り、遺言に記載する財産の金額によって異なります。

目的の価額手数料額
100万円以下5,000円
100万円超200万円以下7,000円
200万円超500万円以下11,000円
500万円超1,000万円以下17,000円
1,000万円超3,000万円以下23,000円
3,000万円超5,000万円以下29,000円
5,000万円超1億円以下43,000円
1億円超3億円以下43,000円

超過額5,000万円ごとに13,000円を加算した額
3億円超10億円以下95,000円

超過額5,000万円ごとに11,000円を加算した額
10億円超249,000円

超過額5,000万円ごとに8,000円を加算した額

 なお、以上の金額をベースとして、さらに、例えば、以下に該当するような場合には、その分の手数料相当額が加算がされます。

・財産を受け取る人ごとに手数料額が加算

・遺言にかかる財産の額が1億円以下の場合には1.1万円加算

・遺言者ご本人が公証役場に出向けないときに、公証人の出張を依頼する場合には、出張加算

 以上は一例ですので、詳細は、公証役場にご相談の際にご確認ください。

 以上の説明のとおり、公正証書遺言は、時間・体力・根気があれば、ご自身で作成されることも可能なものです。ただ、やはり、多くの方にとっては最初で最後のことということもあり、それなりに手間も時間もかかります。

 ご自身で最後までできるか少しご心配…という方は、弊所がお客様に代わって、書類収集から公証人との事前打合せ・文案作成から証人集めまでワンストップでお手伝いさせて頂きます。お客様ご自身でお手続きするのと比べ、大分お手間を減らすことができるかと思います。まずはお気軽にご相談ください。

行政書士ポラリス法務事務所

代表  北原 絢子