【遺言のお話・その③】遺言の「効力」と「遺言でできること」

 こんにちは。行政書士ポラリス法務事務所の北原です。

 今年が始まってから早2か月が過ぎ、東京では先週末に桜の開花も発表されました。ユキヤナギ等の春の花も花盛りで、道行く人の目を楽しませてくれますね。そして、3月は巣立ちの季節でもあります。先日、わが子の通う保育園でも、先週は最終学年の子ども達の就学を祝う会が開かれました。園の玄関には、これまで在園されていた先生方から届いた色とりどりの花が飾られ、まるで先生方に代わって、卒園間近の園児達の保育園最後の日々を見守ってくれているようです。

 さて、ここ最近書いてきました、遺言に関するお話のシリーズ。今日は遺言の「効力」を中心に触れていきたいと思います。


≪前回までの遺言シリーズ≫


遺書とどう違う?遺言の「効力」について

 「遺言」のお話をする時、たまに、「遺書とは何が違うの?」と聞かれることがあります。そこで、似て非なる「遺書」と「遺言」とを比較しつつ、遺言の効力についてみていくことにします。

「遺書」と「遺言」の違い

 まず、「遺書」とは、自身の死後のために書き残す書面のことをいいます。遺書は、兄弟仲良く…などの自身の希望や想いなどの自由な内容を、メモや手紙など形式を問わず残すことができます。しかし、遺書には、法的効力はありません。そのため、例え、遺書のなかで財産の配分についての希望を書き残したとしても、相続人がその遺書の内容に従って財産を分ける必要はありません。

 これに対して、「遺言」には、法律上、その要件や方式についての厳格な決まりがあります。そして、そうした決まりに従って作成することにより、法的効力を生じさせることができます。この「法的効力」の有無、という点において、遺書と遺言とは大きく異なります。(蛇足ですが、最近よく耳にする「エンディングノート」とも、この点で違います。)

遺言の効力・遺言でできること等

遺言は法定相続分に優先する

 まず、前提として、遺言には、法定相続分に優先する強い効力があります(遺言>法定相続分(民法上の規定))。少し難しい話になりますが、民法には、私人間の法律関係や権利義務は個人の自由な意思決定によるべきという原則(:「私的自治の原則」)があります。そして、「人の最後の意思決定」である遺言にも、この原則が適用されます。そのため、遺言が遺されている場合には、原則として、相続人は(遺言の内容が法定相続分とは異なっていたとしても、)その遺言の内容に従わなくてはなりません(※ただし、「遺留分」による制限はあります)。

後の遺言は先の遺言に優先する

 上述の通り、遺言は「人の最後の意思決定」であることを理由に優先されるべきとされていることからすると、複数の遺言がある場合には、そのうちで一番最後に作成された遺言が「最後の意思決定」として優先されるべきということになります。民法上もそのように規定されています。

遺言でできること

 では、遺言に書くことで法的効力をもたせることのできる事項、すなわち、「遺言でできること」には、どのようなことがあるでしょうか?

 「遺言でできること」は、①相続の方法、②財産の処分、③身分上の行為の3つに分類されます。そして、それぞれの分類において、具体的にできることは、次の通りです。

 まず、【①相続の方法】として具体的にできることには、ご自身の財産のうち、誰に・どの財産を・どのような割合で相続させるか等の指定があります。また、問題のある推定相続人を廃除・取消したり、一定期間に渡って遺産分割を禁止したり、はたまた、お墓の維持や法要を執り行う祭祀承継者を指定したり、遺言を内容通りに執行する遺言執行人の指定をすること等もできます。

 次に、【②財産処分】として具体的にできることには、法定相続人以外に財産を遺したい場合等にも用いることのできる遺贈や、寄付、そして、近年よく聞かれるようになった信託の設定等があります。

 そして、 【③身分上の行為】として具体的にできることには、生前に果たせなかった(お子さんの)認知、ご自身の死後に後に残さねばならない子についての未成年後見人・未成年後見監督人の指定等があります。

注意点

 以上の他にも、法律上「遺言でできること」と定められていることもありますが、それ以外の事項は、遺言に記載しても法的効力を持たないため、注意が必要です。

 また、遺言で相続の割合等を指定できるとはいえ、法定相続人に法律上最低限保障されている取り分である「遺留分」を侵害するような内容の遺言については、後々覆される恐れがあります。この点においても、注意が必要です。

 さらに、年齢や認知能力において遺言能力が認められない方の作成した遺言や、法定の様式が守られていない遺言については、後々になってその無効が主張される恐れがあります。これに対し、例えば認知症を理由に遺言無効が争われること等を想定して、公証人も絡む公正証書遺言の形式で作成するなどの事前の対策をとっておくことが、後々になって奏功する場合もあります。

 ご自身での遺言作成をご検討される場合には、今回紹介させて頂いた遺言の効力やできること、そして、注意点にも気を付けながらご作成されることをお勧めいたします。

 ご自身でのご作成がご不安な場合は、弊所までお気軽にご相談くださいませ。


≪次回以降の遺言シリーズ≫


行政書士ポラリス法務事務所 

代表  北原 絢子


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