【遺言のお話・その②】まずは押さたい、遺言の「種類」と「特徴」

 こんにちは、行政書士ポラリス法務事務所の北原です。

 未だ緊急事態宣言の明けない東京ですが、弊所近くの梅の名所「香梅園」では梅まつりが始まって梅の花が次々に満開を迎え、辺りには何とも言えないいい香りが漂っています。三寒四温とは昔の人はよく言ったもので、暖かと寒さを繰り返しながらも確実に季節は春は近付いてきていますね。

 さて、前回からスタートしました遺言のお話について、今回は、その種類とそれぞれの特徴について少し書いてみたいと思います。


≪前回までの遺言シリーズ≫


遺言の種類とその特徴

 遺言は、まず、(1)普通方式による遺言と、(2)特別方式による遺言という、二つの大きなカテゴリーに分類されます。このうち、後者の(2)特別方式による遺言については、かなり限定的な場合にのみ使用されるものですので、今回は前者の(1)普通方式による遺言についてご紹介します。

 普通方式による遺言には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、そして、③秘密証書遺言の3種類があります。以下は、①~③の遺言の特徴を分かりやすくするため、長所・短所について簡単に比較した表です。

 

  ①自筆証書遺言 ②公正証書遺言 ③秘密証書遺言
長所 ・費用や手間がかからず、手軽に作成できる。

・公証人・証人立会いの下で法定の手続きに則って作成されるため、手続き上の不備が少なく、遺言の内容が
実現される可能性が極めて高い。

・本人が作成するわけではないため、本人への負担は少ない。

・原本は公証役場で保管されるため、作成後の変造・隠匿・破棄の恐れがない。

・本人の死後、家庭裁判所での検認手続きが不要。

・遺言の存在を明確にしながらも、内容の秘密が保たれる。

・公証人・証人立会いの下で作成されるので、手続き上の不備が少ない。公証されているため、偽造・変造の恐れもない。

・署名・押印できればよいため、自筆証書遺言ほどの本人の負担はない。

短所

・本文(※財産目録を除く。)を全て自書する必要があるため、本人の精神的・体力的負担が大きい。

・遺言者自身が作成するため、記載不備の恐れがあり、遺言の内容通りに実現されない恐れがある。

・自己保管する場合、作成後の紛失・隠匿・
毀損・発見されない恐れもある(※ただし、後述の制度あり)。

・本人の死後、家庭裁判所への検認手続きが必要。

・公証役場で作成するため、費用と手間がかる(※公証役場への手数料は、財産額及び相続人の数によって異なる)。

・公正証書遺言ほどでないにせよ、費用がかかる(※費用は一律1万1千円)。

・公証役場では原本を保管しないので、紛失・発見されない恐れがある。

・本人の死後、家庭裁判所への検認手続きが必要。

 

 なお、補足ですが、自筆証書遺言の短所の一つである「作成後の紛失・隠匿・毀損の恐れ」や、「検認手続きが必要」であったが故の相続人の手間については、昨年より開始された【自筆証書遺言の保管制度】をご利用いただくことで、解消することが可能となりました(※なお、この制度のご利用には別途手続きが必要です。)。 

結局のところ、最善の方法は?

 それぞれの種類の長所・短所は分かったけれど、結局、どの遺言が一番よいの?…という方もいらっしゃるかもしれません。

 上記の表からは、主な遺言のなかでは「公正証書遺言」が最も長所が多い反面、短所が少ないことが分かります。これを受け、私たち専門家が遺言作成に関するご相談を頂く際には、何か特別なご事情がない場合には、手続き上の不備が少なく確実性の高い「公正証書遺言」をお勧めする場合が多いです。

 ただ、ご事情やご希望は人によってそれぞれですので、最善の方法もまたそれぞれ異なる場合があります。ご自身でのご作成をご希望される場合には、それぞれの遺言の長所・短所等をよくご理解された上で、ご自身のご事情・ご希望に即した種類の遺言をご選択頂ければと思います。

 弊所では、遺言作成のお手伝いをさせて頂いております。「自筆証書遺言を作成してみたはいいけれど、この書き方で問題がないか心配…。」、「公正証書遺言を準備したいけれど、手続きが煩雑で最後までできるか分からない…。」、また、「自筆証書遺言の保管制度を使ってみたいけれど、利用の仕方が分からない…。」等といったお悩みも、どうぞお気軽にご相談くださいませ。


≪次回以降の遺言シリーズ≫


行政書士ポラリス法務事務所

代表  北原 絢子


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