誰もが迎えうる「おひとりさまの老後」について

 こんにちは。行政書士ポラリス法務事務所の北原です。

 先週末の台風で大分金木犀の花も落ち、秋の鳥の声が聞こえ、いよいよ秋も深まってきたように感じますね。

 今年は、コロナ禍であまり都心や屋内施設に足が向かなくなり、近所や屋外で過ごす機会が増えたことによって、東京に自然があって、季節の移ろいを肌で感じられることに改めて気付かされます。

 悪い事のようにしか思えないようなことも、見方を変えれば、良い面もあったりする、本当に分からないものですね。

 さて、話は変わり、今日は、「おひとりさまの老後」について、少し考えてみたいと思います。

誰しも「おひとりさま」になりうる

 「おひとりさま」と言うと、既婚の方からはどうも他人事にとられがちです。

 しかし、男女の平均寿命には開きがあることからしても、はたまた、「熟年離婚」という言葉が市民権を得るほどに増えてきていることからしても、仮に現在既婚の方であっても「おひとりさまの老後」を迎える可能性は十分にあります。

 したがって、既婚・独身にかかわらず、そして、男性・女性をにかかわらず、ある程度の年齢になったら、「おひとりさまの老後」を想定して、備えをしておくのが安心です。

「おひとりさまの老後」で心配なこと

 では、「おひとりさまの老後」で、心配されることとは、そして、それに対する必要な備えとは、どのようなものなのでしょうか?今回は、老後のお金以外の点について、見ていきます。

 独居の方の多くがご心配されていることが、「認知症」、「孤独死」、そして、ご自身が亡くなった後の手続き、について、と言われています。以下ではそれらについて触れていきたいと思います。

■認知症・孤独死への対策

 まずは「認知症」について。ご家族と一緒に暮らしている方であれば、認知症とご家族に気付いてもらえることで、介護サービスを利用したり、法定後見の申立てをするなど、ケアにアクセスし易い状況にあると言えます。しかし、それは、「認知症」の疑いがある、と周囲が気付いてあげられることが前提のお話です。したがって、独居の方の場合には、周囲が異変に気付くことが遅れ、また、ご本人自身も気付かないまま、必要なケアを受けられずに過ごしている場合があります。

 また、「孤独死」について。これについても、認知症と同様に、ご本人の体調の変化への周囲の気付きの遅れが一番の問題であると言えます。

 こうした「認知症」や「孤独死」の防止策としては、地元のお友だちとお茶をする、趣味のサークルに参加する、デイサービスなどを利用するなどして、日頃から意識的に地域と様々な繋がりを持っておくことが大切です。こうした繋がりが多ければ多いほど、万一の場合にも周囲から異変を気付いてもらい易くなり、適切なタイミングで必要なケアに繋げてもらい易くなります。

 また、様々な民間業者による「見守り」サービスや、警備会社による「駆けつけ」サービスを活用する(※自治体によっては、一定要件を充たせば受けられるサービスを自治体で提供している場合もあります。)というのも、一つの方法です。

■死後の手続き

 人が亡くなれば、それで全て終わり…というわけにはいかないのが現実です。葬儀とそれに続く手続きや、死亡届の提出・健康保険証等の返納・年金事務所への届け出等といった行政への手続きが必要になります。それに加えて、賃貸住宅や施設にお住まいであった場合には、遺品を整理して部屋の明渡しをしなくてはなりませんし、未払いの家賃・水道光熱費・施設利用料・医療費等の支払いもしなくてはなりません。このように、人が亡くなった後に発生する事務は、山のようにあります。

 こういった手続きについて、仮に準備をしていなくともお役所が何とかしてくれるだろう…と一般的には思われがちです。しかし、行政でやってくれる事は墓地埋葬法と自治体ごとのルールに基づいて火葬と納骨を行う程度ということが多いので、死後の手続きについては原則としてご家族が行わなければなりません。そして、ご家族がいらっしゃらない場合には、こうした手続きをどのように行うかを予めご自身で決め、手配しておく必要があります。

 そのための備えとして、「死後事務委任契約」という契約を予め第三者と結んでおいて、ご本人の亡くなった後はその第三者に委ねる、という方法が有効と言われています。これについては、また別の機会に書きたいと思います。

知って対策することで不安は軽減しうる

 認知症や孤独死は、漠然と考えると、不安でしかありません。しかし、自分には関係ないと目を背けるのではなく、敢えて知ろうとすること、そして、具体的な対策を始めることによって、漠然とした不安を軽減していくこともできるのではないでしょうか。

 弊所では、任意後見契約への移行を前提とした「見守り」や、「死後事務委任契約」についてのご相談も承っております。制度について知りたい等、何かございましたら、お気軽にご相談ください。

行政書士ポラリス法務事務所

代表行政書士・終活カウンセラー  北原 絢子


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